岩波の20世紀アメリカ短編選で『ユダヤ鳥』を読み、興味を感じていたところ、この本が出ました。翻訳の入手が困難な折、傑作集が丁度出版されて幸運でした。どの作品もわずか数人の登場人物しか出てこないシンプルな舞台設定で、しかも皆さん孤独なユダヤ系アメリカ人。どれも似たような暗い話なのに、なんでこんなに面白いんでしょうか。このシンプルさは、日本の落語に似てると思いました。無駄をなくして『孤独』というテーマに徹底的にフォーカスしていると思います。お気に入りは、喋れない人間と喋る馬が漫才をやる『喋る馬』、ひきこもりの青年と社会の接触を描いた『夏の読書』、貧困のため知的障害を持つ息子を親戚に預けねばならない父親の話『白痴が先』。『白痴が先』は、父親と息子が分かれる日、息子の汽車賃を得るために質屋やラビを駆け回る姿を描き、わずか15ページあまりの短編なのにとても奥行きを感じさせます。凄いと思いました。