本書のベースとなる手法は問題を細分化して、5W1H的に各要素を分析します。それによって重点を置くべき要素や曖昧な点が明らかになり、問題解決に取り組むことができます。非常にオーソドックスではずれのない手法です。
しかし、社会人として実務に取り組んでいるひとであれば、多かれ少なかれこのような手法を実践しています。そのような方には「今更」という印象を受けるでしょう。また著者はビジネススクールや科学を意識して本書を執筆したようですが、その割には実践性や客観性に欠けると感じました。
例えば、本書では日本語によって思考が制約され偏ってしまうことがあると問題提起しています。しかし具体的にそれがどういう事例につながるのかは明らかにされていません。人の思考方法に制約を与えるのは、その人が話す言葉以外に、その人が所属する社会の文化や価値観、その人自身の教養に大きく左右されるはずです。分析や実例の提示もなしに結論だけ提示されても説得力がありません。このような記述を「ふーん、そうなのか」と無批判に受け入れてしまうようでは、それこそ問題解決の思考から縁遠い人になってしまうのではないでしょうか。
佐藤 允一の「問題構造学入門」に示されるような概念や方法論の提示を期待していた私としては、やや期待外れの内容でした。しかし問題解決の基本を押さえたいという方には向いているかもしれません。