にんべん三代目伊勢屋伊兵衛の苦境をはね返す努力と成功を描く半生記。
伊之助は大店の次男坊。
跡継ぎではない気安さの一方にある世の中ナナメに見る僻み根性とも
相俟って、なかなか商売に身がはいらない。
そんなところに父親が突然倒れ、兄と二人、いきなり双肩にのしかかる
重い店の経営。
当主を継いだ兄の婚礼に、客が来ないほど落魄した時代を乗り越えて、
にんべんは江戸一番の大店にのし上がる‥。
幼い頃の伊之助の疑問「商人は何のために商売を大きくするのか?」に、
父は「おまえもあきんどになるのなら、答は自分でみつけるのだな」と
応える。
立派に店を盛り返し、その答を見いだした時、伊之助は三代目伊兵衛を
継ぐ決意をする。
あきないとは?という重い命題に明快な回答をさりげなく示して、爽やかな
読後感につなげている。