先ず、はじめに言いたいのは著者の三枝昂之氏は現代歌人の中で、
私が最も信頼する歌人の一人でもある。
その理由のひとつは、先年発行した『昭和短歌の精神史』を読めば
誰もが納得されるはず。右や左に凭れず、日本人の短歌の精神史を
見つめた本であるが、読みながら思わず襟を正したくなる本である。
その三枝氏が、「あたらしい啄木」を「歌壇」という雑誌に32回
連載したものが本書である。
啄木の何処が「あたらしい」のか、は本書を読めばすぐにわかる。
先ず啄木は、「自分の居場所探している」孤独で心優しい青年なの
である。
だが、啄木の生きた時代も、そして、平成という現代も啄木には、
あるいは啄木のような青年たちにとっては、大変過酷な時代だが、
あの明治という過酷な時代を、そして現代の青年たちは平成という
過酷な時代をどのように生きて行けば良いのだろうか、その答を
三枝氏は本書の中に示唆しておられる。
私は歌人の感性の鋭さと、その温かさに感激している。