これまで、デカルトの翻訳は中央バックス世界の名著のデカルトの巻と岩波文庫落合訳『方法序説』しか持っていなかった。デカルトの自由意志論に興味があって新しい訳を求めて手に取ってみた。
この翻訳は『哲学原理』の第一部に解釈と、デカルトの著作から本文に関連する参照すべき箇所があげられているので、比較検討するのに便利にできている。また巻末に日本語索引とラテン語索引が付されていて助かる。
気になったことを一つ書いておきたい。63頁にユスタッシュの引用がある。引用元は Summa Philosophiae、第2部、49第四問題「自由裁量が問題になるところでは、いかにして自由意志が行為の原理になるか」からであるとされている。ここで「自由裁量」とあるのはよく「自由意志」と訳される liberum arbitrium であると見当がついたが、それではもう一つの「自由意志」は何の訳か気になった。google book でユスタッシュの原典を探してみると、もとの表題はこうであった。
Quomodo voluntas liberum sit agendi principium, ubi de libero arbitrio.
自由裁量は予想通りであったが、「自由意志」は voluntas liberum? しかし voluntas[意志]は女性名詞だから、liberum[自由な、形容詞、中性]につながらない。liberum が懸かるのは中性名詞の principium のほうで、「いかにして意志は行為の自由な原理となるか」としか読みようがないのだが…。これでは一々原典に当たって確認しないと安心して読めない。