タイトルにも書いた通り、主人公や脇を固めるキャラクターの造形が非常に魅力的です。
ただ気になった点もいくつか。
まず小説としての体裁を見ると、作者の文章力が魅力的な設定に追いついていない印象を受けました。
異様に長いうえに情報量も多い一文や、似たような表現の使い回しが散見します。
次に、物語の最後の落としどころ。(以下ネタバレ)
なぜ主人公は自軍が追撃を受けることはないと判断したのか。
また退路は崖が左右に迫る険阻な山道であり、用意さえあればわずかな人数で追撃を追い払うことも、敵将を打ち取ることも不可能ではないと思われる。実際に主人公は物語中盤で、似たような状況の敵将を打ち取ることを登用試験として部下に課している。生徒に出した宿題の答えを先生が間違えたようなものである。はっきり言って戦記物の主人公、それも天才と称される人物としては迂闊としか言いようのないミスである。しかし作中では主人公はあくまで群を抜いた天才であり、それをミスとして言い立てられることはない。
翻って、主人公は天才軍師と称されているが、その具体的な活躍はほとんど描写されない。天才ゆえの精神性は描写されているが、天才ゆえの活躍は描写されない。気付けば主君の領土は増大しており、その過程はばっさりと省かれてしまっている。
天才軍師という主人公が、作者の荷に勝ちすぎてしまった感は否めない。