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虐殺・暴動の描写は、説明過剰かつ平坦な他の部分に比べ、言葉に力があり文章がしまっている。その迫真の筆によって描出された「光景」は臨場感に溢れており、作中でも際立って印象に残る映像性がある。もうひとつの読みどころは、春菜と一誠の別れを描いたラストだろう。並行する電車に乗った二人は、見つめあいながらも決して近づこうとしない。春菜はホームを渡って一誠と盲人の妻が乗る電車に移りたいという衝動に駆られながらも、心の底では自分が決してその衝動に操られないことを知っている。彼女に象徴されるのは、「節度」を知り感情を宥め抑制する人間が持つ「哀しみ」である。この慎みは「足枷」にも「支柱」にもなる「不自由の美学」であり、曽野が言う「運命の受諾」そのものである。
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