阿部和重は生真面目な作家だ。
阿部和重対談集などでもそうだが、彼の対談には二種類あり、気心しれた友達を呼ぶ時の今日はまともなこと話す気はないぞという弛緩モードと、
ホストとしてきてくれた小説家から何かを引っ張り出そう自分の小説に生かそうという二パターンがある。
後のパターンの時に顕著だが、相手の小説を読んでおくだけではなく、その構造をとらえ、繰り返すテーマを前もって抽出したりしている。
批評家のような小説家。
それ以前に小説を読み始めた少年が無心に背伸びして勉強しようという姿がほの見える。
そんな小説家はかえって絶滅しているだけに貴重だ。
それが実は阿部和重の本質なのだ。
かつて、保坂との対談で、保坂の小説の中に男女の関係の機微を無理から読み込んで、そこまで考えていない保坂を引かせていた。
その時はなんのことだかわからなったが、当時執筆していたグランド・フィナーレにひきつけてしか考えられなかったのだろう。
小説に中の前半に主人公を突き放す女との関係を保坂の小説に読み込んで頭いっぱいだったのが今になるとよくわかる。
そんな阿部が大家になってもっと楽な自由な形でより上の形でそれでもより小説としておいしくなるものはないかと、
書くこととは、小説家の人生とは何かと、様々な仕掛けをして取り組んだ本である。楽しんでいただければ幸いだ。