生後1ヶ月足らず、右足の足首から下と左足のほとんどの指を切断され、右目も切られた状態で千葉県動物愛護センターに収容された仔犬。捨てた本人が虐待したのか、捨てられたのちに虐待を受けたのか、真実はわかりません。センターに収容されてはいても、生きていられるのは1週間だけ。期限が来れば殺処分されてしまいます。センターにいることだけでも厳しい状況なのに、この仔犬が背負わされた運命の過酷さに誰もが目を覆いたくなるでしょう。
そんな仔犬を救おうと立ち上がったのが、千葉で犬の保護ボランティアをしている山口麻里子さんでした。「未来」と名づけたその仔犬は、人間によってひどい目に遭わされたにもかかわらず、強い生命力とお転婆ぶりでたくましく成長していきます。体の不自由さなどみじんも感じさせないほどです。しかし里親を探すのも、未来の体が不自由なことを考えると一筋縄ではいきません。ただ「かわいそうだから」という気持ちだけでは、この先の10年以上の犬との暮らしを続けるのは難しいからです。
名乗りをあげた里親さんのなかで、麻里子さんの気持ちを動かしたのは九十九里海岸の近くに住む女性でした。理由は「砂浜なら未来の足に負担をかけずに走らせてやれる」。試行錯誤の末、やっと本当の家族を見つけた未来。まさに命のバトンタッチでした。
未来を捨てたのも人間、虐待を加えたのも人間。でもそれをなんとか救おうとしたのも、実際に家族として迎え入れたのも人間です。命の重さは人間も動物も同じ。命に敬意を払えない人間が増えてきている現代ですから、この本を通して命について考えてみて欲しいです。児童書です。