冷戦の真っ只中である1972年において、ニクソン大統領が中国を電撃的に訪問した。このことは世界を驚かすとともに、冷戦構造を大きく変える時代の転換点ともなった出来事である。本書はその前年に、その前段階として両国間の交渉をまとめるために、キッシンジャーが極秘に中国に渡り周恩来と会談した貴重な機密会談録である。それが2001年にアメリカでほぼ公開されまとめられたことにより、そこに立ち会える運びとなった。
第一級の政治家である両者が繰り出す高い知性と交渉術はさることながら、泥沼のベトナム戦争をメンツを保ちながら少しでも有利に終結させ、政権維持をしたいキッシンジャー側と、東アジアに駐留するアメリカ軍の全面撤退ならびに、中国を台湾を含めた唯一の統一政府として認めさせたい周恩来側の生のやりとりは、実に生々しい緊迫感をもたらす。日本に対しては、経済大国化による軍事化に警戒する中国側と、必要以上に軍事化すると再び暴走する危険性があり、それはアメリカも望まない、よってそれを抑止するための日米安保条約であるとするアメリカ側の主張などが見受けられる。ちなみにこの会談は日本政府に事前通告はなかった。まさにニクソンショック以前の「キッシンジャーショック」である。
この会談は、東南アジアや東アジアを中心として本書をみれば地政学やリアルポリティクスを学べ、日本を中心としてれば日米安保条約とは何なのかといった手がかりがつかめる。手に汗も握れる非常に稀有な一冊である。