すでに指摘されているように、翻訳が悪い。接続法や指示語など、文章理解の上で直訳する必要のない部分をあえて直訳している一方、直訳で十分に意味が取れるところをなぜか意訳し、かえって日本語として意味が取りづらい点が多い。ゼミで用いたが、学生が気の毒であった。
principato, stato、fortunaなどにはそれぞれ「君主政体」「政体」「運命」といった訳語が充てられており、多くの場合その翻訳は、専門的に見て必ずしも適切だとは思われない。訳語が一律で機械的であり、それぞれの文脈を踏まえた翻訳であるようには見えない。訳者自身の内容理解が伴っているのだろうかと疑わざるをえない。
誤訳とまでは言えないにせよ、読者がその日本語を正しく「再翻訳」しなければ、誤解を与えてしまうような点が多すぎる。別の版を用いた点が強調されているが、その相違はごくわずかである。たんなる個人的感想のような不要な注も目立つ。従来の翻訳のほうがはるかに優れているように思われる。