格好いいタイトルとは裏腹に、物語の三分の二くらいは、自らを女の童貞と評する主人公ホリガイ(就職の内定の決まった大学4年の女子学生)の、不恰好な人間関係を、諧謔を利かせて描いていく。それぞれにクセがありながらも、自分の身の回りにもいそうな人々。品のない小金持ち、恋愛にしか自分の価値を見出せないのに、そのことにすら気がついていない女の子、気の弱い善人、気のいい馬鹿、だるそうに見えて気概のある女の子、そ知らぬ顔で闇に飲まれてしまった人。
一見、青春群像風であるのだが、それだけに留まらず、この小説の核にあるのは、理不尽な暴力への抵抗である。物理的、精神的な暴力、意図的な暴力、水面下の暴力、無意識の暴力。日常のはしばしに顔を覗かせる、人を蝕む力。
部屋のふすまにグラビアアイドルの切抜きを貼っていたりはするが、概ね平凡な学生であるホリガイを突飛な行動へ突き動かすのは、苦しんでいる人に手を貸したい、という当り前の道徳観念である。しかし、それは「苦しめた側の人間」に対する憎悪を抱えることでもある。作者はホリガイを単なる善人ではなく、憎しみの川の上に張られた救済というロープをわたる道化のように、危うくリアルに表現していると思う。
是非、最後まで読んで、タイトルの持つ意味を知っていただきたいと思う。