第二次世界大戦下、ナチス・ドイツが押さえていた東欧地域は、その敗戦により、政治上、ソヴィエト(現・ロシア)の支配下に入り、社会主義体制をとる事になる。
表面上、社会は平静を保っていたが、裏では秘密警察による厳しい言論統制や粛清が行われて居り、ポーランド、ハンガリー、チェコでは、自由を求める人々が蜂起しては、ソ連軍に制圧される、という事件が繰り返されていた。
この作品は、1956年に起こった、いわゆる「ハンガリー動乱」と、その直後に開催されたメルボルン・オリンピックでの出来事を学生達の視点から描いて居り、ほぼ同時期に日本で公開された映画としては、アイルランド独立運動に参加する若者達を扱った「麦の穂を揺らす風」(06)等とも似た切り口となっている。
この作品では、時の指導者・ナジ首相などは、ほんの一瞬登場するだけなので、個人的には、もう少し、当時の政治的背景に触れておいても良かったのでは、と思うが、89-90年の「東欧自由化」、「ベルリンの壁崩壊」以降でなければ絶対に作る事の出来なかった映画である事は間違いない。(因みに、この時、東西を隔てる国境の鉄条網「鉄のカーテン」をいち早く取り除き、「自由化」のきっかけを作ったのもハンガリー。)
ソヴィエト以外にも、古くは、オスマン・トルコや、隣国・オーストリア・ハプスブルグ家に支配され続けたハンガリーの人達にとっては、自由とは当然の権利ではなく、常に、戦って勝ち取らなければならない物だった訳で、「普通の生活」ができる事の尊さについても考えさせられる。
制作のゴダ・クリスティナは、1970年生まれ、「自由化後」の新世代に属する新進女流監督。
この映画を観てハンガリー近代史に興味を持たれた方には、同じハンガリー出身のアカデミー賞受賞監督、サボー・イシュトヴァーンが英国の俳優達(レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイス等)を起用して制作した、ユダヤ系ハンガリー人一家の3代記「太陽の雫」(95)もお薦め。