15歳の少年の精神的成長を通じて,世界の中の一人として,あるいは歴史の中の一人として,謙虚に堂々と日々を生きるべきであるということ教え諭す,物語風の啓発書。少年少女向けに書かれたものであり,難解な言葉はまったく用いられていない。
残念ながら,私がこの本と出会うことができたのは,少年時代ではなかった。本書に出てくる「おじさん」よりも更に年を取ってからのことだった。この残念な気持ちを再生産しないために,折あれば,若い人たちに本書を薦めていきたいと思う。年配の人たちにも,「若い人に薦めるように」と薦めていきたいと思う。
とはいえ,「少年ではない今の自分ならば分かりきった内容であった」というわけでもない。恥ずかしながら,思い直させられることが多かった。最初はおじさんの立場になって読んでいたのが,いつしかコペル君の立場で読まされていた。例えば,「この世の全てのものが関わりあっている」ということについて,既に理解していたような気でいたが,コペル君の素朴で日常的な思考を通して,改めてその事実の大切さを感じさせられた。