あの垣根涼介が山本周五郎賞を受賞?と何か賦におちない気分で読み始めた。お馴染みのアウトローたちの姿はなく、日本のどこにでもある社会の一面を「リストラ」というテーマで切り取った作品群となっている。凄腕の面接担当官とリストラ候補者との会話は面白く、笑いありペーソスあり、はたまた業界固有の薀蓄も含まれ、確かにかなり面白い現代小説に仕上がっている。
しかし、しかしである。新しい読者層からお叱りを受けることを覚悟の上で言わせていただくと、『ワイルド・ソウル』『午前3時・・・』或いは『ヒートアイランド』で唸りを上げた垣根ワールドに浸った者にとっては、こういった方向はどうも欲求不満と言わざるを得ない。底辺に流れる激しい情熱や誰にも止められない疾走感(ドライヴ感?)を、肌のどこかでピリピリと感じながら読み進む楽しみが過去の垣根作品にはあった。確かに社会風刺も面白いテーマで取り組みたい気持ちも判らぬではないが(作者あとがきで触れられているとおり)、垣根氏にはもっと大きなプロットでドロ臭い作品を期待したい。
こういったシチュエーションなら奥田英朗という方がおられたが、サラリーマンの悲喜こもごもというテーマであれば荻原浩も結構面白く、『メリーゴーランド』や『神様から一言』あたりをお薦めしたい。今回は大変厳しい評価であることを承知で星3つとする。最後に、性描写のくどさについては私も結構気になった。