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短篇をどう捉え、どのように挑んでいるかは作家によってだいぶ違うし、長編以上に力量に差が出るのが短篇であるというところにこそ、ぼくは短編集の楽しみを求めてしまうのだが、この作家については短篇作品は、実験的なイメージが強い。長編で扱う部分を短めなアイディアだからと短篇に移行したような物語ではなく、短篇でなければできないような実験を敢えてやらかしているイメージが強いのだ。
他の短編集もいろいろと読んだ上の判断なのだけれど、そういう実験的イメージは他の作品集により強い。この本に限っては、ススキ野探偵という作者の売りのシリーズになるために、実験的自由度がそう高くはないせいか、ある意味他の短編集よりもずっと落ちついた風になっている。それでいてやはり実験的試み。
正直言ってつまらないものはつまらないし、たまに秀作があるという程度で、東直己が短篇の名手などとはお世辞にも呼べない。ただ本書に限っては、ススキノ探偵のシリーズを読んでいる人にはやっぱり是非読んでいただきたい。いつもの酒とススキノとユーモアに対する探偵のこだわりは、短篇においても逸品だから。
そして、何よりもこのシリーズはススキノ探偵<俺>の造形がすべてなのだ。長編ほどに<俺>の内側に接近してはいないにせよ、一人称のハードボイルドで書かれた短篇集であることは事実である。そして3年ほどの間いろいろな時期に書かれていると言う点は、ファンにとっては興味深いはずだ。中編と呼んだ方がいいような作品もあるし、それぞれにおいて、アイディアやトリックよりも人間そのものに重心を置いている点では変わりなく、まさしく東直己である。安心して手に取ることのできる短編集と言ってもいいと思う。
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