米ワールドコム、米エンロン、雪印乳業などの衝撃的な破綻劇から、米ゼネラル・モーターズ、米コカ・コーラ、ソニーなど、時のトップが招いた損失まで、取り上げるケーススタディーは多岐に及ぶ。本書ではそれら失敗の局面を「新規事業への進出」「イノベーションの導入」「M&A(企業の合併・買収)に乗り出す時」「競争相手に反撃しようとする時」の4つに分類し、原因を究明していく。
著者は、失敗の原因としてよく言われる経営者悪党説や無能説を否定し、むしろその逆だと言う。名経営者だからこそ失敗しやすい“7つの習慣”が隠されていると指摘し、「自分と会社が市場や環境を支配しているという勘違い」や「自分と会社の境を見失う公私混同」などについて解説する。大失敗には必ず兆候があると言い、トップの暴走、過度な誇大宣伝などに関する17のチェック項目を示す。
(日経ビジネス 2004/07/26 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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興味深いのは、ここで大失敗をしでかした経営者たちは、いずれも過去に大成功を納めた人ばかりだ、ということ。
かつてあれだけの人気を誇った青島幸男氏が、先の参院選であっさり落選したが、落選の報が入ったとき、当の本人は当選を確信して前祝の最中だったとか。自分の本当のポジションを見極めるのは実に難しい。
ビジネス書に成功談と失敗談があるとすれば、圧倒的に成功談が多い。そしてそのほとんどが何の役にも立たない。成功は所詮結果であってプロセスではないからである。プロセスがどんなに間違っていようと、ついているときはうまく行ってしまうものだ。往々にして理屈よりも勢いが勝つことを我々は知っている。だから他人の成功プロセスは決してなぞることはできないのである。
他人のマネをして成功することはできないが、しかし、他人の失敗を見て少なくとも同じ失敗を繰り返さないことはできそうである。なぜなら失敗は、まちがいなくそこに至ったプロセスが失敗のプロセスだからである。そこから学ぶことはたくさん、ありそうである。
人の振り見てわが振り直せ
もって他山の石とせよ
他人の失敗に学ぶべし、という格言は多い。経営者でなくとも、普段からの心がけに応用できる何かを、本書からきっと発見できるはずである。
それも生半可な失敗ではなく、世界に名だたる大企業や強豪企業、新鋭企業がガタガタになるような大チョンボを集めてきて、そこにある共通項を見出そうという、そういうアプローチの分析である。
で、結果としては出来上がったのは経営学ではなく人類学の本になっている。
つまるところ経営者という人種についてのスタディになっている。
おおざっぱに言って、経営者を経営者たらしめているいくつかの資質(成功へのエネルギー、支配欲、自信、拡大志向、決断力・・・)が、同時にまた大きな失敗の原因にもなるのだ、というメッセージを、ツラツラツラツラと書いている。
成功の復讐的なメカニズムなので、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」にちょっと似ていなくもない。
ただ、あのように整理されていない。
章の構成は現象→原因→対処方法というようになっているのだが、現象と原因で似たようなことが書かれていたりして、感覚的に言いたいことは分かるのだけど「経営者が失敗するパターンは大きく~ですよ。更に細かく見ると~ですよ」といった形に整理しようと思うと、相当タイヘン。
従って戦略ファームのスタッフや経営学の研究者にとっては、仕事や研究にアプリケートしにくいと思われるかもしれない(レビュアーもそう)。
ただ経営者という人種は、やはり普通の人とちょっと違うのだな、というのを感覚的に理解するのにはタイヘン役立つし、自分で整理・構造化するのをいとわなければ、貴重なフレームが得られると思います。
研究成果を一般人にも公開するために書かれた本書は400ページ以上もあり、多くの経営者が失敗する実例やその原因・対策を読んでいると、だんだん、何が何だか分からなくなってきました。
そもそも、無名な企業や最初から無能な経営者は取り上げていませんので、少なくともここに出てくる会社・経営者は一時代を築いています。だからこそ失敗が際立って見えてくるのです。強引に要約すると、成功した企業・経営者は自分自身の成功に溺れて危機の兆候を見失うような社内の空気(ワンマン経営者だったり、上級幹部全体の風潮だったり)を作りだしてしまうようです。
経営者をチェックせよ、というのが本書の結論です。
会社の幹部でもない自分にそんなこと言われてもなぁ。……と思う人は、読まない方がいいかも。
最後に、本書の予言が的中した個所を紹介します。本書には、大リーグのレッドソックスの失敗事例(黒人選手の入団を拒みつづけたおかげで弱小チームになったこと)が紹介されています。一度失敗した会社でも、間違いの原因を克服すれば再び興隆する可能性がある、と結論を出した後で、「レッドソックスだって、来年優勝しないとも限らないではないか」と結ばれています。
本書の予言(?)通り、この本が出版された翌年(2004年)にレッドソックスは優勝しました。マスコミは「バンビーノの呪いが解けた」と大騒ぎでしたが、本書の最後の言葉が“呪い”を解くきっかけになったのかもしれません。
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