著者本人が「あとがき」で述べているように、本書はもう一方のヨーロッパの名家「ハプスブルク家」を「読み解いた」同名の著書との姉妹編です。二冊の本の構成が絶妙で、両方読むことによって、ヨーロッパ史の断面が実にくっきりと浮かび上がってきます。
「怖い絵」シリーズでお馴染みの著者独特の巧い語り口が本書でも遺憾なく発揮され、読むものを飽きさせません。
「ハプスブルク家」同様、冒頭に簡単な系図が掲載されていますが、当時の政略結婚の有様が手に取るようにわかり、なかなかのものです。また絵画の「読み解き」に入る前に、「前史」の解説が書かれているのも背景がわかって、これまたなかなか好ましい試みです。
フランスのアンリ4世が、国家予算規模の持参金を目当てに再婚した相手というのがイタリア・フィレンチェの大富豪メディチ家の女傑マリー・ド・メディシス。彼女がそもそもの発端。ルイ13世の母親であり、彼女の資金とど根性がブルボン家の基礎を築いたといっても過言でないでしょう。だから、中野センセもルーベンスの「マリーのマルセイユ上陸」を最初に持ってきたのですね。
ブルボン王朝のそもそもの発端から、1830年の7月革命で実質的に息の根を止められたこの王朝の紆余曲折を、名画とともに「読み解く」この企画、実際に現物の絵画に触れ合うときには、本書を読んでいるのとそうでないのとでは、その絵の観方・鑑賞の仕方に相当の差が出てくること請け合いの好著です。