私は海外の二世で、日本語の読み書きにどこかと不安を感じる。環境が環境で、海外放送、インターネット、本から学ぶしかよしがない。日常会話はともかく、文章になると頼りになるのはやっぱり本だ。
高評で手に入るものを片っ端から読んで読み返して教えを実行したつもりでも、不安が治まるところか、かえって危機感がわいてきた。不得意の分野に首を突っ込んで方向性を見失った感じ。いや、最初から方向を見当ついてなかったと言った方が正しいかも。どうしても手取り足取りが欲しくなる。迷いをすぱっと切り開いてくれる本を欲しくなる。そしてこの本に出合った。
他人の作品や文章を論理や文法から指摘するのは稀でも他に見るが、文章の気取り方まで下すのはこの本しかないだろう。そして目線が厳しい。過ちや甘さを一々曝す厳しい睨みを利かしている。文章の機微の捉え方や語彙の豊かさを実例で説明なされ、ただただ承服しかならない。姿勢を正さないからこそ無躾千万な文章しか書けないし分別がつかないのだ、とお叱りを聞こえてきそうな硬派な講義である。
不安または危機感がこの一冊で払拭されたかというと、正直にそれはない。しかし、その目線を知っただけでも大き収穫で、これほど睨みをきかす本は私はまだ知らない。