長らく絶版状態だった「カッレ君」シリーズの第一弾です。このシリーズはリンドグレーンとしては珍しく、ティーンエージャーの少年・少女を主人公にすえていて、彼らが子供の視線を保ちつつ、大人の世界へ足を踏み出し始める様を味わうことができます。
といっても、この小説の背景は50~60年代のスウェーデンの田舎町。とてものんびりしているんです。大人たちは皆(基本的に)善人だし、子供たちは素直だし・・・・そんな町に事件が起こり、いささか退屈していた主人公も巻き込まれていきます。
児童小説といって侮るなかれ。情景や心理の描写も巧みだし、よくよく読み込んでみれば、当時のスウェーデン社会情勢や問題もうかがえて大人でも楽しめる内容だと思います。それにしても、子供たちののチームワークは素晴らしく、彼らを見守る大人たちの視線も暖かい。巻末の解説で山田洋二監督が「寅さん」シリーズの背景の下敷きにしたというコメントに驚くと同時に納得できました。