アニマルセラピーには2種類ある。ボランティアなどが動物を連れて、病院や施設を訪問し、触れ合いを通して癒しを与えるもの(動物介在活動)、治療を目的として医療、介護スタッフが個別のケースに応じて動物を治療の場面に関わらせるもの(動物介在療法)である。
本書は後者の動物介在療法を日本で初めて本格的に取り入れた、岡山にある介護施設のドキュメントだ。2002年冬、アメリカで訓練を受けてやってきたのはジャスティンとスウィートの2頭。本書の主人公であるジャスティンは、若い女性や子供が苦手なちょっと臆病で怖がりの柴犬である。入所者やデイケアで施設に通ってくるお年寄りの中には、脳梗塞の後遺症で体のどこかに麻痺が残っていたり、言語や発語に障害がある人が多い。そんなお年寄りに、積極的にリハビリに向かう意欲と、前向きに生きる気持ちを起こさせるのがジャスティンの仕事だ。
思うようにリハビリが進まずに焦ったり落ち込んだりしても、犬は嫌な顔をせずに待っていてくれる。人間相手だと、つい感じてしまう気恥ずかしさや苛立ちの気持ちを犬は受け止めてくれる。そしてなによりも大切なのが「ジャスティンが待ってるから頑張ろう、元気になろう」という気持ち。ジャスティンを撫でたい、ジャスティンに話し掛けたいというひたむきな思いが、お年寄りのリハビリを頑張らせるのである。ジャスティンはそんな彼らにそっと寄り添い、優しく見守る。
個々の症例を検討し、治療やリハビリの計画を立て、ドッグトレーナー、介護者、療法士などが一体となって治療や日々の生活の向上のために犬を関わらせていく。このような介在療法がもっと広まっていく世の中であって欲しいと思う。写真が多く掲載されているが、ジャスティンやその他のセラピードッグを抱いているお年寄りの表情は豊かで穏やかだ。