スピッツの初期3作はどれも傑作なのだが、
特に第2作である今作は完成度的に図抜けている印象がある。
しかしレコーディングがあまりに順調だったため、当のメンバーにはあまり制作過程の記憶がないらしい。
初期スピッツ特有の一癖あるメロディーと、
ロックバンドとしてのタフさと、
シュゲイザー的な微かに霞がかったサウンドとがうまく共存している。
一方詩は幻想的、空想的で力みというものと全く無縁である。
そしてそれらが奇跡的なまでに、絶妙に解け合っている。
聴く者を魅了する独特の色彩を放っている。
1曲目、川の流れのようなアルペジオのイントロを聴いた途端に理論や方法論は意味をなくし、
終始美しい旋律に身を委ねることになる。
アルバムとしての流れも良い。
抑え目な1曲目から一気にアッパーな2曲目に突き抜け、
かと思うとメロディーの立った名曲が2曲続き、いきなりパンク調の曲に。そのまま名作「プール」になだれ込む。
何度聴いてもここまでの流れは完璧である。
後半は後半で気の抜けた、どこかクセと毒気を孕んだ楽曲が続く。
そしてラスト「魔女旅に出る」でハッピー、かつ切なく幕を閉じる。
収録時間は38分台と短く、何度も繰り返し聴きたくなる。
まるでそれが意図されているかのようでもある。
本作が人知れず世に放たれるのは、ヒット作を量産する態勢に入る5年も前のことだ。
若さで乗り切っている面もあるし、バンドサウンドもなんとなく拙い。
しかしながら、彼らが以後このような淡い空気感を持った作品を発表できていないのも事実である。
それゆえ本作を聴く意義は未だに大きいのである。