一般人が知るよしもないアダルトヴィデオの世界。中でもアイドルのように持て囃される企画女優やキカタン女優とは異なり、浮かんでは消えていくあだ花のような存在、「企画女優」にスポットを当てたインタビュー集が、この「名前のない女たち」シリーズだ。
本シリーズの著者中村は、あまりに悲惨なインタビュイーの絶望に感染したあげく徐々にダウナーになっていき、結果的に第4巻の
『最終章』にて、約8年間続いたシリーズに幕を引いている(継続して読むと、初期の著者と最後のややメンヘラがかった著者への変化は興味深い)。本書はそうした著者が巡り合ってきた「名前のない女たち」の中でも、とりわけ印象に残った女の子たちを、著者と編集者と出版社がピックアップしてまとめた、いわゆる「ベスト盤」の様相を呈している。
最初の「ホームレス女」からしてすでにぶっ飛んでいる。彼女らの口から紡ぎ出されるのは、さらながらケータイ小説の「実写版」。両親による虐待、レイプ、貧困をめぐる話は、作り話とさえ思えてくる。そんな難易度:ベリーハードな人生をサヴァイブしてきた彼女らが行き着いたのが、AVという業界なのだ。
正直、AV女優のみんながみんなこういう境遇だったとは言えないし、同じような境遇でもAV女優にならなかったという人もいるだろう。そういった意味でこの本は現実の一側面にすぎないが、そんな一側面も味わっておいても損はないだろう。
ただ、ベストセレクションの本書は特に飛びきり不幸な境遇の女の子を集めているきらいがあり、「AV女優」という側面が希薄になっている感は否めない。いわば、「AVどころの騒ぎじゃねぇ!」のだ。だから、AV女優とはどういった仕事なのかということには、この本はあまり答えてくれない。巻末には、非モテという絶望のうちに自らをコンクリに叩きつけ憤死したAV男優「鈴鹿イチロー」の足跡を追ったルポも収録。個人的にベストセレクションで一番好きな文章だ。