元々、宮部さんは一見小物なようで実はかえってそこがたちが悪い、
という悪を描くのが上手いよな、と思っていました。
たとえば「今夜は眠れない」で
誰からも愛されるよい子ちゃんの見本のようだった女の子の
ジコチューぶりが最後に暴露されたときは喝采ものでした。
私は「誰か」よりこちらが好きでした。「誰か」のときは
杉村一家がちょっとリアリティがないぐらい
メルヘンチックに描かれていたのと、依頼人の姉妹がさいごまで
どちらも好きになれなかったので、あまり感情移入できないのがちょっと、だったのですが、
今回、ついに杉村家も怪しくなってきたので逆に興味をそそられています。
途中購入した家の環境調査に
躊躇なく大金を使う菜穂子に違和感を感じる場面からはじまり、
結局その家を今度はなんの躊躇もなく手放すという菜穂子に
夫の杉村一郎が引っかかっている、という箇所が詳細に語られているので
これは今後(絶対続編がまたあると思いますが)
伏線になるのだろうな、と思いました。
それにしてもこの作品での「困ったちゃん」女性はこわかったです。
一応毒殺事件の話なのに毒殺犯人は
ぜんぜんどうでも良く、この女性のインパクトが強かった。
名もない毒ではありますが、この種の毒はたしかに
世の中に増えていってると思います。
ただ、宮部さんが上手いのは、杉村一郎の「逆玉」状況に対して
大なり小なり毒のある発言をせずにいられない人々も
また「毒」なのだ、ということもちゃんと表現していることですね。
「火車」「理由」みたいに一気に読ませる力はないのですが、通勤の時など細切れな時間につらつら読むには適している良品だと思います。