まず、一言で言うと、「名著」。感心する。
日本と米国の裁判のあり方を、日本の最高裁判所の大法廷に並んだ統一化された同じ椅子と連邦最高裁判所の法廷に並んだそれぞれ様々な個性のある椅子を例えにして、語り始める、その部分が非常にいい。
日本の場合、どの裁判官が判決しても、先例に従い、類似事件であれば、同じような判決となるのに比べ、合衆国では、その事件を裁く裁判により個性のある判決が生まれる。
なぜそのようになるのか、制度から日米の裁判所に対する考え方をもとに論じています。
日本の裁判所の制度が悪いとレッテル貼りをするわけでもなく、淡々と現実の日米の裁判所や裁判官、そして、判決の双方の違いを論じていくのに好感が持てます。
内容の緻密さもさることながら、イデオロギーに偏した論述がないこともとてもよいと思いました。
また、訳出も非常に優れていて、わかりにくさも全くありません。
法律の知識や裁判所に対する知識がなくても本書だけで、十分に楽しむことができる。
あえて、第一級のエンターテイメントといえると思います。
もっと、欲を言うと、なぜ日米でそのように裁判所や裁判官に対する考え方が異なるのか、その歴史的経緯が書かれていたらもっとおもしろかったかなと思います。
個人的には、日本の場合、修行を積み中庸の精神を獲得することができ、その中庸の精神を獲得した人が裁くべき(武士道的)、アメリカの場合は、そもそも人間は悪で、悪をどうこうすることは本質的に不可能であり、制度的にその悪を抑制するしかないという考え方によるように思います(ホッブス的)。