こういう作品を心のどこかでずっと待っていました。
昔のBL本ならあり得る内容ですが、ここ10年位こんなにときめいた本にはお目にかかれなかったので。
とにかく主人公達がやたらとピュアなんです。恋愛に対して。
見ているこっちが可愛くて可愛くて「あんた達はもうっ!」とぎゅっと抱き締めたくなる程に。
最近のBLはすぐHに持って行こうとする展開ばかりが目立ってしまって、正直飽き飽きしていました。
男同士の恋愛に対して主人公達があまりに悩ま無さ過ぎる。
(まぁこの作品の片方の主人公「草壁」も、あまり悩まないと言えばそうなのですがw)
あったとしてもHまで本当にすぐだったり。
BL本を購入して読む度に、そんな内容の繰り返しにがっかりさせられて
「またこんなのか…ジュネネタもここら辺が限界なのかな」
と、半ば諦めモードでいました。
そんな感じでBLからも少々離れ気味になっていた頃、この本をうらぶれた書店の隅っこで発見したのです。
他のレビュアーの方も仰られていますが、確かに中村さんの絵にはアクがあります。
クセが強い絵柄なので好みも相当別れると思います。
私も中村さんの作品に触れたのはこの本が初めてで、絵柄で正直買うかどうか悩みました。
ですが、書店で買うべきかどうか30分程悩んだ末に、表紙の爽やかさと直感で購入を決めました。
買って良かったです。本当に良かった。
読み進んで行くうちに絵柄のアクなんてどうでも良くなってしまいました。
それどころか、ハマったが最後、そのアクさえも魅力的に感じて来ると思います。
これを読んでいる方の中に、絵柄で購入を躊躇している方がいらっしゃるなら損してますよ。
絵の好きずきでこの作品を読まないなんて勿体ないです。
特に初期のジュネ作品(まだBLという表記が存在してなかった頃)が好きな方なら
是非是非読んで欲しい。
あの頃のときめきが蘇る事請け合いです。
流麗な美しい輪郭線。ガサついた線など微塵も無い、丁寧に描かれた人物達。
Hシーンが無くともここまで魅せられる…ある意味Hなんかよりずっと淫猥な人物の表情描写。
憎い間の取り方、空間の活かし方……そして登場人物達の心理描写の事細かさ。
台詞で説明せずに、そのシーンの空気感で読ませる作家さん、とでも言うのでしょうか。
それが読んでいて堪らなく心地好いのです。
音楽の時間に歌を歌わず口パクで済ませていた「佐条」を見つけて、
そして放課後の教室で一人歌の練習をしている「佐条」を見かけて、
一瞬見惚れてしまった「草壁」。
最近のBL作品ならそこで「一目惚れした!」となる所でしょうが、この作品は違います。
ただ「佐条」の一挙手一投足、そして発言が“気になるなぁ、なんでだろう?”なんです。
そして無自覚で友情を育んで行く内に、唐突に「草壁」は気付くのです。
無自覚で衝動的にしたキスという行為と共に。
頭を抱え叫びながら「だって俺 お前のこと好きになっちゃったみたいなかんじなんだもん」と。
「草壁」が同性を好きになったのが初めてなら、「佐条」も同性からの告白なんて初体験。
お互い始めて同士おろおろしつつもゆっくりと育って行く愛情。
途中でちょっかいかけて来る美味しい役所の音楽教師「原先生」も、
“嫉妬”というスパイスでその愛情の育成に一役買ってたり。(原先生も幸せになって欲しいw)
この先もずっと見ていたいと思わせる魅力的な登場人物ばかりです。
読後感は表紙通りとても爽やか。
自分としては、この作品に2008年度のベストオブBLを捧げたいですね。
本当に沢山ときめきを頂きました。何度読み返したか知れません。中村さんご馳走様でした。^^
このお話はまだ続きが書かれているという事なので、2巻を今から楽しみに待っています。