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業界では「神様」扱いされている西山千氏も、通訳の仕事の上ではこんなに失敗を色々やったという懺悔録みたいな本で、軽快な口調の対談はスラスラ読めます。いつもはアクの強い自信家松本道弘氏も今回は聞き役に徹しています。活字が大きく、読み易いけれども、情報密度はやや薄いと思います。もう少し英語の勉強法や通訳技能の訓練法にも触れてもらいたかったです。
巻末部には英語での対談も収録され、さらにその後半部はCDにも収録されていますが、その意図はよくわかりません。リスニングの練習に使えということか、スピーキングのモデルにせよということなのか?値段があまり高くないのは助かりますが、あまり使用法の分からない付録です。
同時通訳の経験で二人がやらかした失敗談を中心に英語通訳業の奥深さを描く一冊、という志で企画されたのかもしれませんが、結果的に本書は二人の茶飲み話に終始しています。一本筋が通ったテーマ設定がなされている様子は見られず、思いつくまま気の向くまま、英語にまつわるあれやこれやのおしゃべりを二人が楽しんでいるばかりで、特段目を見張るような含蓄ある話は登場しません。これぞ通訳業の極意、と呼ぶほどの内容は見当たりませんでした。
アポロ月面着陸中継時の通訳で西山氏が犯したミスについては、これまでも幾度か活字になったのを目にした覚えがあります。松本氏は「いい話は何回聴いていいものだ」とは言いますが、その言葉に納得できるほどの心を私は持ち合わせていませんでした。
これはひょっとしたら相当コアな西山ファン、あるいは松本ファン向けの一冊ではないでしょうか。それも大好きなアイドルが掲載された雑誌はすべて収集しないと気がすまないという類いのファン心理をくすぐる本といえるのでは。なにしろ付属のCDには二人の英語による対談が18分ほど収録されているのです。アイドルのエッセイだけではなくて、歌や踊りもあわせて味わいたいという気持ちを汲んだ結果の付録CDという印象を持ちました。
収録内容は本書に日英対訳で掲載されていますが、お話の内容は本書の別のところで論じられていることと重複する部分もあるなど、全体に整理が行き届いていない様子があります。
西山氏も松本氏も、英語を使うことでどれほど世界が広がるかを長年にわたって身をもって示してきた先達です。その事実は私も大いに認めるところです。しかしそれでも、この本は少々いただけなかったな、というのが正直な思いです。
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