ある日突然、東北の一山村が日本から独立する、という筋のユーモア小説である。作者はこの小説を通じて「国家」というものを支える諸制度や権力関係について、日頃このような問題を考える機会に乏しい読者に触れて欲しいと思ったのだろう。そして、作品を読む限りその狙いは見事に成功しているし、ヘタな評論を読むよりもよほど勉強になる。
しかし、こればかりは好みの問題で仕方がないのだが、文学評論的に言うと、「一般人より能力の劣る人間」を主人公にする、というユーモア小説のパターンを見事に踏襲しているような小説は、個人的には余り好きではないのだ。特に、本小説では必要以上に主人公の喜劇性が強調され過ぎている気がしないでもない。このあたりは好みであろうから、あまり気にされない方にとっては面白く読めると思われる。