やはり特筆すべきは吉田松陰の下田事件の最終目的を「墨夷鷹懲」すなわちペリー刺殺に
あるとしたところであろう。全編を通じて松陰の燃え滾るような志が感じらる。
松陰が怖れたのは当時、清国が英国に植民地化されたように日本が欧米の属国化すること
であり、外国の侵略を防ぐためにも外国の文物を良く学び、良いものは取り入れるべきで
あると述べている。やはり読書と思索、当時の一流の人との交わりによって正確に当時の
状況を把握していたといえる。
松陰の幕府観、国体観、天皇観、そしてその思想の変化成長が丹念に描かれている。
功績が無ければ国家の役に立つことがない、というのは間違った考えであり、たとえ功績が
無くとも人として正しいあり方を明らかにし、人として行うべき道を正しくして利益を考え
ない、こういう姿勢を保てば後々人々の模範となりその国に正しい風俗が確立される。
「人としての道義を守り行うことを私の責務とし、現在および後世にまで維持することを私
の任務とする。」とまで松陰は断じている。まさにこの志あってこそ人々に絶大な影響を
与えることができたのであろう。
「攘夷に関する責任は私にある」と考えた松陰の気宇の大きさを知る。幕末当時の長州藩
の自由闊達な雰囲気も感じ取れる。
御著者の今後の研究に期待いたします。有難うございます。