源氏名というのか、春駒となった作者の、吉原に売られてからの日記である。
やむを得ず伏せ字になっている箇所も、どういう内容か想像がつくだけに、少しだけ昔の日本でこのような人権蹂躙が行われていたことに、改めて衝撃を受ける。
教育を受けることもままならなかったであろう作者の文章ではあるが、事実の持つ迫力が、多少の文章のつたなさなど覆い被せてしまうものとなっている。
昨今、江戸時代の吉原については、どちらかといえば華やかな印象だけで語られることが多いため、現代の日本人に少なからず誤解を植え付けるおそれがあると危惧していた。そんななか、この本は、近代の吉原がどれだけ残酷な場所であったか、再認識を迫るものであり、多くの人たちに知っておいてほしいものである。
自分が知りうる範囲の先祖が過ごした時代に改めて思いを馳せてみたい。