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この本に書かれていることは、一言で言うならば「どんな議論のしかたが理想的か?」ということです。議論が決着すると、そこに合意が生まれます。それゆえタイトルが『合意術』なのです。
著者は合意には「よい合意」と「悪い合意」があると言います。「悪い合意」とは司会者や会議の重要人物などの鶴の一声によってなあなあに決まってしまう合意のことです。逆に「よい合意」とは参加者が「腑に落ちる」感覚を持てる合意です。
「よい合意」は、その後のやる気が違います。なぜならば「よい合意」に至る過程で参加者がお互いに議論を尽くし、全員が「何が問題なのか?」を深く理解し、解決するための意欲が湧くからです。私もこのような合意が生まれれば理想的だと思います。
特に感心したのが「定性情報」についての考察で、少数意見こそが、問題を読み解く鍵になることを著者は主張します。例えば、著者が勤めていた日本航空が機内禁煙に踏み切ったきっかけは、利用者のコメントカードに寄せられた少数の苦情(食器のニオイ、スチュワーデスの化粧のニオイ、タバコのニオイ)をきっかけに、匂いに敏感な人が増えてきたという隠れた情報を読み取ったためです。
これらのニオイに関する苦情を最初に提出した人は、普通の人よりも時代を先取りした感度が鋭い人であり、このようなデータは数学的な分析から手に入れることはできないことを筆者は説きます。
「お客の声を生かそう」「市民の声を生かそう」というような言葉はよく使われますが、どのように生かすかに対する方法論を私はあまり知りません。この本にはその過程がつぶさに描かれ、納得させられることしきりでした。
私の拙い説明でどれほど良さが伝わったのか非常に心許なく思いますが、読んでいて何より「ああ、こうすれば良いんだな」という実感が湧きました。次の日から少しずつ実行しています。この本の一番良いところは、特に難しい技術を覚える必要が無い、ということです。筆者の主張を私なりに噛み砕くと「相手に問題の全体像を示して(見晴らしをよくして)、一緒に答えを探っていく」というものなので「見晴らし、見晴らし」と考えつつ著者の考えを実行しただけで、確かに会議の雰囲気が一変しました。反応が良くなったような気がします。
とにかく、良かったのは具体例の一つ一つが腑に落ちたこと。決して押し付けがましくなく、手品の種明かしをされているように「なぜそうなるのか」を体験できました。
この合意に関する議論が深まって欲しいという願いをこめて星4つです。
できるだけ多くの人に読んでいただきたい本だと思います。
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