60〜70年代に新聞等様々な媒体で著者が発表し、多くが文庫本に分かれて収められているエッセー23篇を、安土桃山時代という切り口でまとめた本。信長・秀吉の二傑を語るよりは、同時代に生きた周辺の人々や社会・文化の成り立ちに多く頁を割く。
本書によれば信長・秀吉は商人型で徹底した合理主義者であり、家康は農民型・一族の支配を貫くために体制を硬直化させたということになる。相対的にはそうかもしれないが、家康も海外との交易に積極的だった。著者が関西人であることも影響している?
本能寺の変については、丹波・丹後平定戦の頃から光秀が受けていた重圧を指摘する。
本書が魅力的なのは、播州男児の性格を作った別所長治、堺がもたらした開明性とそれにあこがれた黒田官兵衛、無名だが、日本人の思考の特徴を発揮した高木法斎や吉岡妙麟尼(籠城戦を指揮した)等の時代の点景と言える人々に目を向けていることだ。信長に謀反した荒木村重が秀吉の御伽衆となったことも初めて知った。世評は悪くても、著者の近所の土地改良に着手した片桐且元の有能さも忘れていない。
きっと読者の心を捉える人に出会えるだろう。