……私は城が好きである。
あまり好きなせいか、どの城址に行ってもむしろ自分はこんなものはきらいだといったような顔を心の中でしてしまうほどに好きである。だからできるだけ自分の中の感動を外(そ)らし自分にそっけなくしつつ歩いてゆくのだが……(『街道をゆく』「大和・壺坂みち」より)
……甲斐の武田信玄は「天命われにあり」とおもったればこそ父を追って権力の座についたわけだし、奥州の伊達政宗も、敵に拉致されてゆく父の輝宗を敵とともに撃ち殺したのも、この感情である。
事、成就すれば「天にもっとも近い者」であることを人に知らしめるために天空を劃(かく)するような城をつくる。(『国盗り物語』より)
……有名な城のなかでは、やはり大坂城がすきである。いまの廓内は石垣のほとんどにいたるまで徳川初期の再建によるものだとおもうのだが、それでもわれわれがこの城のなかを歩いて感ずるのは秀吉立身の奇譚であり、豊臣氏の栄華とその没落という大ロマンである。(『毎日グラフ 別冊 日本の城』より)
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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