本書は、前検事総長である筆者が、その検事・法務官僚としての半生とともに、司法制度改革の背景や経緯、日本社会の特質とそれが司法制度改革へ与える影響等を描き出している。
日米構造協議から外国弁護士導入論議、そして司法制度改革審議会の設置へと至る経緯に関する記述は、「外圧による日本社会の変革」という本書の底流をなす通奏低音と、そこに大きな役割を担った筆者の実体験に基づくディテールとが相俟って、説得力と臨場感がある。
しかし、結局、法曹三者が少数派であった司法制度改革審議会において、なぜ、「国民の司法制度参画」の手段として、刑事裁判、それも重大事件への国民参加という制度が作られるに至ったのか、評者が最も知りたかった疑問への十分な解答はない。
また、裁判員制度への評価はまだ時期尚早としても、法曹人口の大幅増加を目指したロースクール設置・新司法試験実施による司法試験不合格者や就職できない弁護士、質の低い弁護士の発生という「司法制度改革による影」についても、「当事者」の1人として、筆者には何らかのコメントをして欲しかったところである。