司馬遷の史記をベースにしながら縦横に筆を走らせ、全部で101章。テーマは多岐にわたっており、中国古代の習俗(「長幼の序」等)や特定の時代(「謎の西周」等)、さらには史記の後世への影響(「諸葛孔明の『史記』」、「大うつけ」(つまり織田信長)、日本の「大政奉還」等)にまで筆が及ぶ。各章は2〜3頁で、特定の事件を扱った章、例えば「馬陵の戦い」では2頁の中で史記の記述から現代考古学の発見、そして著者の推理まで叙述が展開する。
このように、本書では、単なる史記の解説にとどまらない、中国古代史・社会を出発点とした著者の思考の逍遥を楽しむことができる。私は特に義に殉じた「門番の活躍」の章、そして蕪村のまさしく史記の広大な風景を描いた「指南車を胡地に引去ル霞哉」という句が気にいった。
読者は本書によって、史記が「人知の宝庫」であること、そして後世に及ぼした影響の大きさを理解できるだろう。