日本でも鳥インフルエンザが話題になっているが、本書は類病で史上最悪のウィルス感染病SARSが2003年に世界蔓延する一歩手前で食い止められた顛末を綴った渾身のレポート。そう言えば数年前SARSって言葉、聞いた事あるなぁ、という方には是非読んで欲しい。世界的規模で中世のペストを上回る死者を出してしたかもしれないのだ。
元々このウィルスは中国奥地にしか生息せず、しかも動物間でしか感染しなかった。ところが、こうしたウィルスは人体に入ると突然変異を起こし、人の間で感染する可能性がある。それが、中国の極端な経済格差により、地方の若者が都会に出ながらもロクな職に就けず、屠殺などに携って、野生動物の血肉を浴びるうち感染し、"野味"を好む浮かれた中国人の間に拡がる。続々と倒れる患者と医者。しかし、中国政府は事態を軽視し、かつ隠蔽する。人命より国の面子を重視する中国らしい。しかし、香港を初めとする中国内の"義士"とWHOによって水際で食い止められる。香港は国際ハブなので、もし香港で食い止められなかったら、本当に世界中にSARSが拡がっていたのだ。
病気自身の怖さもさる事ながら、もっと怖いのは中国政府の態度である。経済発展の名目のため、東海岸線の都市は野放し状態。魔都のようであると言う。経済格差の問題にも対応しようとはせず、地方の若者が経済発展のための下層としてどんな扱いを受けても知らん振り。そして、人命に関る問題、特に今回のように世界的な規模の問題に関しても、自らの面子の方を大切にする姿勢。公共心が全くない。そして、相変わらずの隠蔽体質。中国はやはり何も変っていない。本書の副題は以下のように変えた方が良いだろう。「そいつは、中国政府が世界に広げようとした」