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自分の意識の中に深く入り込み、自己の存在基盤を確認すると同時に、それを曖昧にもしていく、日野氏のこの小説は、読者に「自分とは何か」という根源的問いを投げかけます。
読めば読むほどに、忘れていた記憶たちが意識の彼方から次々にやってきてしまう、そんな体験を通して、自分を見つめ直したい人にお勧めの小説です。
日野啓三はこの作品の中で日本語を駆使している。とても意識的でクレイジーな人である。個人の感覚のぎりぎりの部分を書き写すことに成功していて、初めて日野啓三の文学に触れる人は、たぶん一度読んだだけでは理解できないと思う。ミステリーのように話が複雑なのではなくて、独特なのだ。
本人の生きてきたものと幻想とが作者の意識(妄想のような。)で造形させられている。現実はもっとシンプルなはずなのに、こうも屈折して観ることができるのかと思う。夢遊病者の感覚はこういうものかもしれない。
あらためて、自分が意識を持っていることに気が付く。「啓示」という感覚をこの小説で知ることができるはず。
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