「台湾に生きている日本」著者の日本領台時の鉄道に特化した本。台湾縦貫鉄道を中心に鉄道敷設の悪戦苦闘ぶりを伝える。台湾が日本から分離されたこともあって、領台時の鉄道史はほとんど先行研究が存在しない中、一次史料を用いて埋もれた歴史を掘り起こした、新書ながら大変な労作。総督府線はもちろん製糖会社線や人車軌道など地方路線まで、保線状況までカバーしているのがすごい。
台湾総督府は、南北連結が経済発展の基となることを見抜き、原住民、抗日ゲリラの襲撃、半分が倒れるほどの病気を乗り越え、領台後、1、2年で企画し、わずか10年で全通させた。その結果、台湾は単一の経済圏になり、南北の港から島外に物産を搬出することで台湾は発展した。中心になった後藤新平の先見の明が伺われる。当時の写真、図版も多く、鉄道の島だった植民地時代の台湾の姿をよく伝えている。
テクニカルな話は比較的少なく、多少なりとも鉄道に興味があれば、車両通でなくても楽しんで読める。ちなみに前作「台湾に生きている日本」は読み返すたび、じわりと歴史の重みがにじみ出る本で、台湾に訪問したくなる一冊。私は実際に訪れた。☆4つにしたのが悔やまれる本当に数少ない本。「植民地台湾」という微妙なテーマの第一人者として、出来れば日本の評価について中立な立場で、前作や本書のように「自分の歴史を大切にする台湾人」を伝えるスタンスを大事にしてほしい…と思う。