日本の保守層が喜んで再生産するような、「統治時代は良かった」という
言説を台湾人に語らせたものではない。その点で、このドキュメンタリーは
大きく評価されるだろう。
戦後やってきた国民党政府のまずさとの比較から、台湾は西洋諸国の植民地の
ような「脱植民地」を経験することができなかった。近代台湾を作り上げた
日本を懐かしむ気持ちと、解放後の自分たちを見捨てた日本への悔しさ、
どちらにも傾き切ることができないために、いまも、日本のノスタルジアに
とどまり続ける。それが、皮肉なことに台湾ナショナリズムの支えにもなったりする。
インタビューイのひとりが、フィルムの最後に「悔しい、懐かしい、これは解けない
数学のようなものだ」と語る。そこに全てが凝結している。
このようなドキュメンタリーを、日本人の立場から撮った酒井監督はすごい。