台湾の中学生が使用する初めての台湾史教科書である。1997年になってはじめて台湾の歴史が「郷土史」という位置づけで教えられることになったという。
台湾史は1600年代前半のオランダ人・スペイン人の占領時代から始まると言っても過言ではない。その後、鄭成功の時代、清の統治と続く。ところが、18世紀に入るとまたほとんど記述がない。ようやく1874年の日本出兵を機に、沈葆'テイの台湾建設や劉銘伝による台湾省統治が記される。
1895年から1945年までの日本殖民統治時期の記載が長いことに驚く。143頁中36頁を割いているから本書の1/4を占めていることになる。当初日本による接収に抵抗した様子が書かれている。日本は大軍を出動させ鎮圧し、台湾軍民の犠牲者は14000人の多きに達するとあるが、これは多くの日本人にとって知られざる史実ではないか。日中戦争から第二次世界大戦において台湾籍日本兵の総数は20万人余の多きに達したという。
統治体制の特徴として、典型的な警察政治や保甲制度をあげている。保甲による「纏足と弁髪の追放、風俗の改良、迷信打破などの運動、農業改革の推進」などは肯定的に書かれている。教育と学術の発展にも寄与したことは、1945年の学齢期児童の入学率80%に表れている。いかにも日本人らしいのは「時間厳守の観念の養成」である。必ず時間通りに出勤簿に著名すること、勝手な遅刻早退を許さないこと、交通は時刻表を定め、時間通りの発着と目的地への到達を行ったという。
戦後の政治史部分はわずかに12頁しかない。特に違和感を覚えるのが蒋介石統治時代であり、ほとんど何も書かれていない。蒋中正という言葉自体1の文脈に2度書かれているのみである。代わりに蒋経国の写真が2枚も「先生」という敬語付きで掲載されている。
日本時代や戦後史の記述に「妥協と遠慮が感じられる」と訳者はいう。それを差し引いても得るところは大きかった。