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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
掘り出し物でした。,
By あまなっと (福岡市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 台所太平記 (中公文庫) (文庫)
「谷崎潤一郎」というイメージからは意外なほど単純に面白い作品でした。 主人公(おそらく谷崎氏自身)宅のお手伝いさん達のお話です。今で言うオムニバス形式になっており、とても読みやすいです。 軽いながらも、そこは谷崎潤一郎で女性の美しさについての好みやその描写はしっかり押さえられています。 今読んでも全然古くない名エッセイと思いました。のんびりしたいい時代の日本が味わえます。
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
軽妙な筆致で描く様々な人間模様,
By
レビュー対象商品: 台所太平記 (中公文庫) (文庫)
谷崎潤一郎晩年(76歳)の作品である。昭和10年前半から昭和30年頃、谷崎自身をモデルにした「千倉磊吉」の邸宅が舞台。主に京都と熱海にある千倉家で働く女中達の様々なドラマがオムニバス風に綴られている。昭和の激動期、田舎から出てきた素朴で可憐な少女達が、徐々にたくましく育っていく人情喜劇である。これが実際に起きた話であるかは興味がもたれるが、当然虚実入り混じっているであろう。しかし、谷崎が身近な女中を観察して、小説のモデルにしたようなネタ明かしにも思えてくる。これはあの小説のあの女性に似ているなと思い当たることが多いであろう。 さて、小説は「瘋癲老人日記」に似た軽い語り口の娯楽小説ともいえる。女性が持っている可憐さとたくましさ、かよわさとしたたかさのような二面性がみごとに描かれている。 終盤には、谷崎文学お約束の「優柔不断な男と勝気な女」が登場するが、この作品は珍しくもハッピーエンドに終わっている。 老境に入った谷崎が今まで仕えてくれた女中達へ感謝の気持ちを表わしているのかもしれない。
5つ星のうち 5.0
女中へのノスタルジー,
By Yutaka Nagae (Chiba, Japan) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 台所太平記 (中公文庫) (文庫)
谷崎潤一郎76歳の時の作品。昭和11年頃から戦争をはさんで昭和33年頃まで、谷崎家に奉公してきた女中たちを回想した作品。主人公千倉磊吉は谷崎自身である。昭和11年夏に鹿児島県川辺郡西南方村泊(今の南さつま市坊津町泊)出身の「初」が登場するところから始まる。その半年後、「初」を頼って従妹の「えつ」が千倉家に転がり込んで来たのを皮切りに、次々と同郷の娘たちが芋づる式にやってくる。磊吉は「初」を女中としての仕事ぶりや主人に仕える実直さを評価しており、それは鹿児島の土地柄によるものだと考察し、「初」を頼ってやってくる娘たちも同様に評価しようとする。 この小説には鹿児島の方言についての記述がある。「初」を始め、娘たちは磊吉の住まいのある関西の方言をあやつることはできるが、ひとたび娘たちどうしの会話となると磊吉やその家族は何を喋っているのか、さっぱりわからなかったようである。谷崎が小説の中で書き留めている当時の言葉は、平成となった現代でも普通に使われている言葉であり、昭和初期の鹿児島県川辺郡西南方村でどのような言葉が使われていたのかを知る上で興味深い。 大正期から戦後直後くらいまで、西南方村や東南方村(今の枕崎市)では、関西に女中に働きに出た、という人が多数いた。その後世は大きく変わったが、九州の南端に位置する「初」の出身地にはあまり仕事がなく、県外に仕事を求めにいく様子は平成となった今もあまり変わらないようだ。昭和後半から平成初期には、「初」のような女中の経験者がおり、その経験談を鹿児島でも聞けたものだったが、今ではそのような人は少なくなり、さみしい限りである。 谷崎の著名な小説とは趣が異なり、全般的に軽く読みやすい作品である。
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