人公のグレゴリー少年は成績優秀な完璧主義者。きちんと整えた自分の領域を守りたいがために、他人にうちとけない性格になっている。そんなグレゴリーが、家政婦マルタの雑然とした台所に居心地のよいものを感じた。しかしマルタは、「この台所にはいい場所がない」と悲しげにもらすのだった。
いわゆる「よい子」なのだけれど、どことなく危うげなグレゴリーが印象的です。自分だけの力でマルタにマリア様をプレゼントしようと、高級宝石店にだって背筋を伸ばして乗り込んでゆく彼のプライドがいじらしい。
主人公の不安や孤独が癒されるという筋の小説の多くは、愛なり友情なりが外界から主人公に与えられるものですが、この作品では、自分から「与える能力」を獲得し、それによって満たされてゆく若々しい主人公の姿が描かれています。
装飾的な挿絵、特にカラーの口絵は美しく、内容にぴったり。