三篇とも、味わい深い。
「犬を連れた奥さん」と「イオーヌィチ」は、エゴイストな中流階級の男の悲哀を描いていて、ある女性との出会いが、主人公の転換点になる所が、似ている。
「犬を連れた奥さん」の方が、漱石の小説のような、しみじみと情感に溢れる終り方をするのに対して、「イオーヌィチ」の方は、戯画的な描かれ方で終わる。
この二人の主人公の差は、ヒロインとの共感の差と孤独さの差でもある。自分の品を保つ張り合いには、“大切に思える誰かがいるのか”が、大きいのかもしれない、などと考えさせられた。
「可愛い女」は、自分がなくて、周りの誰かに同調する事ばかりな女性の話。
トルストイが、「女性というものが自ら幸福となり、また運命によって結ばれる相手を幸福ならしめんがために到達しうる姿の永遠の典型」として讃えているという解説の文章を読むと、時代の違いを感じさせる。
そういえば、「戦争と平和」のナターシャも、こういう所があったかな…という気がする。