歳時記といえば、普通季語を欠かせない俳句の歳時記のことであるが、本書は俳句と短歌を半々に収録するアンソロジーである。季節を詠みこむ歌を俳句とともに鑑賞できるのが、どちらも好きな者にとっては有り難い。
30年間週刊誌に連載されたものがまとめられている。万葉集から現代の作品まで幅広く収められているが、中心となるのは近代の古典とでもいうべき作品群だ。歌でいえば、若山牧水、斎藤茂吉、釈迢空、北原白秋、土屋文明などの大家はもちろんとして、初期アララギ派の伊藤左千夫、長塚節、小泉千樫、島木赤彦、中村憲吉などの作品も多数採られる。本書によって私は彼らの歌を初めて色々知った。現代に通じる歌の規範の出所に向き合うような懐かしさと今なお失せない新鮮さを彼らの歌に覚える。
アンソロジーであるから選者の好みが反映されているのは当然だろう。私の印象でいえば、そのキーワードは、寂寥感と透明感である。ランダムにページを繰って一句一首をじっくり鑑賞する。本書を入手してすでに10年経った。季節のめぐりとともに春夏秋冬の一冊を折々ひも解くことは私の習いとなった。味わうほどに磨かれる言葉の宝石、元気づけられる心の糧である。