古代の天皇祭祀を担ったのが中臣氏と忌部氏である。天孫降臨の際に随行した天児屋根命(アメノコヤネノミコト)の子孫が中臣氏、天太玉命(アメノフトタマノミコト)の子孫が忌部氏とされている。大化の改新で中臣鎌足が功を立て藤原氏の祖となり、政治の実権を握るに及び、忌部氏の力は衰亡していった。二つの記紀は中臣氏、藤原氏に都合の良い記述や改竄が散見されると言われている。そのような状況で忌部(斎部)氏の老翁広成が一族が受け継いだ諸伝承を平城天皇に撰上したのが本書で『古事記』『日本書紀』を相対化し、批判的に研究するための必読文献である。文庫版では訓読文、訓読補注、漢文本文、解説からなり、訓読文だけなら40頁足らずの短い文献である。補注や解説がとても詳しく役に立つ。