戦後急速に消滅してきた日本の伝統的家屋、古民家。
カール・ベンクス氏は、現代の生活にあった快適で美しい「古民家再生」を実践する。
誰でも再生したいと思うような元・豪邸だけ再生する業者も沢山いる中で、氏はどうみてももう使い物にならないだろうと思われるような廃屋や古い建具の真の価値を見抜き、再生する。ごみとして廃棄される運命の家だったはずのものも、氏の手にかかると見事な芸術品に生まれ変わる(それが、ほんものであれば)。
そこには、失われゆく古民家への深い愛情と、また反面切ないメッセージが込められている。「you should be proud of this」なぜこんな素晴らしいものを誇りに思わず、捨て去るのか?
カールさんは「なぜ日本人は宝石を捨てて、砂利を拾うのですか」という。
再生すれば見事に蘇るはずの日本の昔からの家々が、日本から消え去り、新建材と外材でできた、やすっぽい「洋風」の住宅が全国に立ち並ぶ。
日本人が、日本古来の住宅の良さに価値を見出さず、使い捨てのような家を建てるのにお金をかけることに、疑問を呈している。
「古民家再生」が建築の一ジャンルとでもいえるほどメジャーになるとともに、お金儲け主義の古民家再生業者が跋扈する中で、氏は、良心と使命感をもってして日本家屋とその再生の技術の維持を残していこうと仕事をしている、数少ない、貴重な存在である。
日本人が捨てて顧みない日本の宝石を指摘することは、実は、日本の良さ、素晴らしさをあえて日本人が気づかず、安易に捨てていることに警鐘をならしていることにつながるのではないか。
「古民家再生」にこだわらず、これから家を建てる日本人にぜひ読んでもらいたい一冊である。