筆者の池谷伊佐夫さんはイラストレータで、生来の古本好きが嵩じて古書店めぐり、古書蒐集の道にハマった方ようです。
本書の初出は、『諸君!』2005年8月号〜07年12月号にかけて連載されたもので、番外編「ロンドン古書店・古書市めぐり」は『文藝春秋』2008年2月号に掲載分を大幅に加筆したものでした。
各項目に書かれている古書店の内部を俯瞰して記してあるイラストが見事です。本職ですから当たり前ですが、写真では到底撮ることのできないアングルですし、そのお店の雰囲気が一目瞭然なのがまたいいですね。展示品も細かくメモしてあり、お店に取っても嬉しい内容だったと思いました。
東京古書会館、岡山の巨大古書店、即売展、京都下鴨神社の大古本市、神保町、鎌倉、根津・千駄木、大阪四天王寺大古本祭、福岡、軽井沢、田園調布、北海道、松山、金沢、そしてロンドン古書店・古書市めぐりまで、取り上げる古書店も各地に散らばっていますが、そこに置かれている古書や古本への思いが綿々と綴られており、本当に「古本蟲」と書かれている通りの愛情が感じられました。
また「今回の収穫」として購入した本のイラストと簡単な内容が描かれています。幅広いジャンルに関心があるのが見て取れました。
132ページに「取材は別として、古書店にいる時間は短い。客が私一人の場合などは、せいぜい5分である。15分もいると、店主もそろそろこちらの存在を意識しはじめる」とありました。
このタイミングの取り方の難しさがある意味古書店の雰囲気を表していると感じました。
購入した古本を抱えて珈琲を飲みながら共に眺めている描写もありましたが、忙しい日常を送っている現代人にとってこのような至福の一時を得られるのは幸せでしょう。このゆったり感が文章から感じられました。本好きにはたまりません。