受験生向けでない古典文法や読解の本を探していた時に、書店で目にしたのが、この本だった。「はじめに」を読んで「具体的に日本語で書かれた古典文学を一通り読みこなせるようになるまでの、必要な知識は何々か、習熟すべき技術はどれどれかを読者とともに考えてゆく。」と書いてあったので、この本を購入した。読んでみたが、一言で言うと、まとまりに欠ける。文法の説明は受験参考書の方がはるかに体系的でわかりやすい。2章の最後に「夏と女性」という節があり、興味深い内容だったが、なぜこの本のここに入っているのか、つかみかねた。その他の章もすべて、興味深いのだが、全体に章や節ごとの関連に欠け、一冊の本としてのまとまりがあまりない。発表済みの文章をここに一冊にまとめたようで、それがまとまりに欠ける理由らしい。この本の題や「はじめに」や裏表紙にあることを見ると、古典を読む方法を、体系的につかめる、あるいは具体的な知識や技術が得られるかのような印象を受けるが、実際の内容は少し違う。読み物として読むには面白い本であるので、題名や裏表紙から想像する内容と、実際の内容が異なるのが残念だ。とにかく体系性に欠けるので入門書という言い方は当たらないが、入門レベルの本ではあると思う。ただし、入門の定義は何なのか、という疑問が残る。私は一般読者としてこれから古典作品を読んでいこう、という意味での入門、と理解していた。実際、体系性に欠けるものの、この本の1章から4章までは、この意味での入門者むけの記述であると思う。ところがこの本の5章は、これから作品研究を志す入門者へのアドバイスとなっている。そういう意味で等質性に欠け、対象が定まらず、本全体の評価を落としている。残念である。