「古典に出てくるキーワードや概念を切り口にして、現在の日本経済を語る」というコンセプトの本書であるが、著しくまとまりを欠いている。
「古典を読み直して(裏読み的に)再解釈し、新しい視点を提示する」という形で、文芸評論のように人々を知的に楽しませる「学問の芸」に留めておけばそれなりの出来になったのかもしれないが、古典の内容を現代経済と無理にリンクさせ、さらに処方箋さえもを提示しようとする妙な「実学指向」によって、非常に中途半端な内容になってしまっている。
過去の時代の経済書は、当時の時代背景をもとに、知の巨人達がどのように社会を切り取ったかという歴史的・思想的価値はあるものの、実証性に乏しく、やはり現代に応用可能だとは言いがたい。著者自身も、マルクスの『資本論』は経済学としては支離滅裂であるが、哲学としては一流であると述べているように、やはり古典を用いて現代経済に対して問題提起をしようとするコンセプトに大きな無理があるだろう。
本書のテキストは「アゴラ連続セミナー」という講義の記録に、筆者が手を加えたものとのこと。これは推測になるが、知識に一定の実用性が求められる講義という形式をベースにしているにも関わらず、筆者が「学問の芸」部分を加筆をしているせいで、このようなちぐはぐな内容になっているのではないか。
やはり本は一冊ちゃんと書いたほうがいいと思う。