長きに亘る自然との闘いと文明の進歩の結果、我々の社会はいまや発展と繁栄の極みを謳歌するに至り、こうした状況は今後も無限に続いていくように思われています。しかしながら、我々の祖先が恐怖と畏敬とを以って接し来たった大自然は、果たして本当に人類の英知の前にひれ伏しているのでしょうか。
本書は、米国の高名な考古学者が、今から約18,000年前にまで遡り、欧州・中東・米大陸等を中心として人類発達の足取りを追いつつ、気候と文明との関係を説き明かそうとする試みです。地球の軌道離心率や太陽活動の変化、海流や氷河の状況、そして火山の活動などにより気候上のパラダイムが変化した際の、人間文明に及ぼされた凄まじいばかりのインパクトを丁寧に解説しています。
そして著者は、文明の進歩により人類は自然に抗う術を獲得してきたものの、居住地移動の可能性の低下やサンクチュアリとしての森や海の消滅に伴う柔軟性の喪失により、今日の先進文明は、「千年に一度」といった規模での気候大変動に対しては却って脆弱性を増していると主張しています。
自然との関係において、人間の営みは、結局のところ、ほんの小さなものに過ぎないのかも知れません。本書を読んで、そんな妙に謙虚な気持ちを味わったことでした。